ファクタリングは「一生使い続けるもの」ではない。銀行融資に復帰するための資金繰り改善計画

監修者:加藤隆二
この記事の監修者
加藤隆二 現役ベテラン銀行員ライター

根本的な経営改善をするためにはファクタリングから銀行融資に復帰するための道筋を描くことが重要です。

私は銀行員として30年以上、数多くの中小企業の決算書を読み、経営者の方々と向き合ってきました。
そうした銀行員の経験から断言できるのは、ファクタリングは「薬」であるということです。

正しく使えば命を救う特効薬になりますが、誤った用法や乱用をすれば経営体力を奪い、最悪では「中毒死=倒産」に結びつく恐れさえあるからです。

そこで今回は、現役銀行員の視点からファクタリングという資金調達手段の「正しい出口戦略」について解説します。
ファクタリングを利用すること自体は、現代のスピード経営において決して恥ずべきことではありません。

しかし、それを「当たり前の習慣」にしてはいけないのです。最終的に銀行融資に復帰し、低コストで安定した資金繰りを実現するための具体的なステップをお伝えします。

なぜ銀行員は「ファクタリングの常態化」を懸念するのか

銀行員の視点で見ると、企業の資金繰り表にファクタリング(若しくはファクタリングを指し示す動き)が並び続ける状態は、危うい信号として映ります。

そこでまず、なぜファクタリングを卒業し銀行融資へ戻る必要があるのか?
その根本的な理由を整理しましょう。

ファクタリングは、売掛債権を現金化する「資産の売却」であり、借入ではありません。
そのため、バランスシートをスリム化できるメリットがありますが、コスト面では銀行融資よりかなり高額となります。

銀行融資の金利が年率3%台など一桁であるのに対し、ファクタリングの手数料は年率換算すれば数十%に及ぶことも珍しくありません。このコスト差が、長期的に企業の利益を確実に蝕んでいくのです。

大きい「コスト構造の差」

ファクタリングの手数料が、必ずしも低くないことは銀行員の私も認識していますし、知識のある人ならご存知のことだと思います。

もちろん融資とは別の資金調達方法で、圧倒的なスピードなどファクタリングのメリットへの対価としての手数料なので「不当に」高いものではないと銀行員の私は考えます。 …とはいえコスト負担が大きいのも否定できない事実なので、利益を圧迫し赤字に転落するような利用は避けるべきです。

銀行審査における「ファクタリング利用」の評価

一部のネット記事などでは「ファクタリングを使っていると銀行から融資を受けられなくなる」といった表現もありますが、これは半分正解で半分間違いです。

ファクタリングも、一時的な資金ショートを回避するため戦略的に活用しているなら「経営判断」として評価されます。(少なくとも私ならそう考えます)

しかし毎月など恒常的に利用している場合には、「この会社はファクタリングを止めると翌月の決済ができない『自転車操業』状態にあるのでは」と銀行員は考えるかも知れません。

このように無計画な「出口戦略のない」ファクタリング利用は、銀行からの信用を低下させる要因になるのです。このあたりが「ファクタリング利用=銀行融資NG」といった極端な噂につながっていると銀行員の私は思います。

ファクタリングを「非常用出口」から「成長の踏み台」に変える思考法

言うまでもなく、ファクタリングを全否定する必要はありません。
急な受注増に伴う仕入れ代金の支払いなど銀行融資が間に合わない局面では、正規のファクタリング会社による迅速な現金化は非常に有効な手段であると、銀行員のわたしは考えています。

大切なのは、その利用を「一時的な緊急避難」と位置づけるか、それとも「恒久的な資金源」と考えてしまうかの意識の差です。 そこで次は、銀行員が考える「健全なファクタリング活用のためのマインドセット」を解説します。

「前倒しの負のスパイラル」を理解する

ファクタリングは言ってみれば「未来の現金を今に持ってくる行為」です。
当然ながら今月は助かっても、来月入るはずだった現金は使ってしまっているわけです。

そのため資金調達が苦しいままでは、来月もまたファクタリングをしなければ資金が回らなくなります。
これがファクタリング依存の状態です。

こうした「前倒しの負のスパイラル」を断ち切るには、どこかで一度、キャッシュフローをリセットするという強い意志が必要です。

優良業者を選ぶことが「銀行復帰」への近道

悪質な業者(例・闇金に近いような、高額の手数料を要求する業者など)を利用してしまうと、支払負担が大きすぎて、二度と銀行融資に戻れなくなるほどのダメージを負います。

一方、手数料設定が適正で契約内容が透明であるなど優良なファクタリング会社を利用していれば、資金繰りの崩壊を防ぎつつ、時間をかけて経営改善に取り組むことが可能です。

銀行融資に復帰するための「3つの改善ステップ」

では具体的にどうすればファクタリング依存から脱却し、銀行融資(プロパー融資や保証協会付き融資)へ戻れるのでしょうか?
銀行員が審査の際に見ているポイントを逆算した、3つのステップを提案します。

STEP
正確な資金繰り表の作成と開示

銀行融資を再開するための第一歩は、現在の資金繰りを「見える化」することです。

多くの経営者が、頭の中だけで資金繰りを管理していますが、これでは銀行を説得できません。

例えば以下のような方法で見える化をアピールできます。

 <正確な資金繰り表の作成と開示のために>

  • 向こう6ヶ月分の資金繰り予定表を作成する。
  • いつ、どのタイミングで、いくら不足するのかを特定する。
  • その不足分を「なぜファクタリングで補っているのか」を説明できるようにする。

銀行員に対し、「今はファクタリングを利用しているが、これだけの改善計画があり、半年後には融資に切り替えたい」と正攻法で相談に行くことがアピールできるポイントです。

STEP
売掛先との交渉と入金サイトの短縮

ファクタリングが必要になる最大の理由は「支払いが先で、入金があと」というサイトのズレです。

これを改善できれば、ファクタリングの必要性自体が低下します。

  <売掛先との交渉と入金サイト短縮のために>

  • 入金サイトの交渉: 「末締め翌々月末払い」を「末締め翌月末払い」に変更してもらう。
  • 支払いサイトの交渉: 仕入れ先への支払いを少し待ってもらう、あるいは分割にする。

銀行員は、経営者が自らこうした「経営改善の努力」をしている姿勢を評価します。

STEP
収益性の改善

前述した通り、高額なファクタリング手数料を支払ってもなお利益が出る体質を作ることができれば資金繰りも安定してきます。

 <収益性改善のために>

  • 不採算部門の整理。
  • 経費の削減(役員報酬の見直しを含む)。
  • 売価の引き上げ。

「ファクタリングを止めるために、まずは利益を出す」という理屈なのです。

まとめ

ここまで、現役銀行員の視点からファクタリングとの付き合い方、そして銀行融資への復帰計画についてお話ししてきました。
最後に、本記事の要点をまとめます。

1. ファクタリングはあくまで「一時的な手段」

常用すれば高額なコストが経営を圧迫します。銀行員は、ファクタリングの常態化を「リスク」と見なします。

2. 出口戦略(銀行復帰)を描く

資金繰り表を作成し、いつまでにファクタリングを卒業するかの計画を立てることが、銀行の信頼回復に繋がります。

3. 優良業者の選定

銀行融資に復帰するためには、法を遵守し、適正な手数料で運営されている正規のファクタリング会社を選ぶことが不可欠です。

ファクタリングは、正しく使えば中小企業の強力な武器になります。仕入れのチャンスを逃さないため、あるいは黒字倒産を防ぐために、このシステムを有効に活用してください。 そして、手元資金に余裕が生まれたら、速やかに銀行融資という「安価で安定した資金」へ切り替えていく。このステップこそが、企業を10年、20年と継続させるための健全な経営の王道です。