現役銀行員が教える、悪質なファクタリング業者を見抜く方法

監修者:加藤隆二
この記事の監修者
加藤隆二 現役ベテラン銀行員ライター

現役銀行員ライターの加藤隆二です。 銀行に勤めて30年以上、現在も融資の最前線で中小企業の経営者様と向き合い続けています。

日々激動する経済情勢の中、事業資金融資(銀行のプロパー融資や保証協会付き融資、日本政策金融公庫など)だけでは、急な資金需要に対応しきれない場面が増えていることを、私は現場で痛感しています。

「今すぐに現金が必要だ」という場面で、審査に最長で数週間を要する銀行融資は、残念ながら無力なことがあるのです。
そんな中、資金調達手段として定着しつつあるのが「ファクタリング(売掛債権の売買)」です。

ファクタリングは法的に認められた、有効な資金調達手段です。
銀行員の私から見ても、バランスシートをスリム化し、キャッシュフローを改善する手段として理にかなった手法だと言えます。

しかし残念なことに、ファクタリングという仕組みを悪用して法外な手数料を搾取しようとする悪質な業者が紛れ込んでいるのも事実で、金融庁からも強い注意喚起がなされています。(※1)

そこでこの記事では、現役銀行員である私の知識と経験に基づいて「正規の優良なファクタリング業者」と「違法な悪質業者」を見抜く方法を解説します。

銀行の中の人による、資金調達の現場からお届けする生の声なので、ファクタリングで事業資金調達を検討している人はぜひ参考にしてください。

※1 金融庁/融庁からのお願い・注意喚起/ファクタリングの利用に関する注意喚起

ファクタリングは正当な資金調達手段、ただし偽装には要注意

はじめにファクタリングの基本事項や銀行融資との違い、注意事項を整理しておきましょう。

ファクタリングとは?〜ファクタリングと事業資金融資の違い

ファクタリングとは、企業が保有する売掛金(「売掛債権」)をファクタリング会社に売却し現金化する資金調達の方法です。
同じ資金調達方法でも銀行などの金融機関や日本政策金融公庫、そして消費者金融や貸金業者のビジネスローンといった「事業資金融資」とは、法的な性質が異なります。

ファクタリング詐欺は本当?実例から学ぶ危険な業者の特徴と安全な見極め方を紹介

名称資金調達の原理法的な性質
ファクタリング売掛金の売却
売掛金を売却して資金調達する
債権の譲渡
事業資金融資借入(借金)
必要資金を借り、利息をつけて返済する
金銭消費貸借契約
ファクタリングと事業資金融資の違い

資金調達という点は共通していますが、「ファクタリングは融資(借金)ではない」というのが最大の違いです。

金融庁が警告する「偽装ファクタリング」〜ファクタリングを装ったヤミ金融

ここでまず注意すべきなのが「ファクタリングを装ったヤミ金融」で、金融庁も強く警告しています。(※2)

優良なファクタリング会社を利用することは、経営戦略として有効です。
しかし、悪質業者に騙されると倒産する確率が飛躍的に高まってしまいます。

次章から、具体的にどのような手口が違法とされるのかを深掘りしていきます。

※2 金融庁/その資金調達だいじょうぶですか?

悪質なファクタリング業者の手口とは

悪質な業者は、一見すると親切でスピーディーな対応を装っています。
しかし契約内容や取引には、どこかに違法な兆候が隠されています。

1.「償還請求権あり」なのに貸金業登録がない

少し専門的な用語になりますが、ファクタリングには「償還請求権(リコース)」という概念があります。

償還請求権あり(ウィズ・リコース)

売掛先(取引先)が倒産して代金が回収できなかった場合には、買取を依頼した利用者が支払わなければならない。

償還請求権なし(ノン・リコース)

売掛先が倒産などで支払い不能になっても、利用者には支払い義務がない。

もしも契約書に「売掛先から回収できなかった場合には、利用者が支払う」といった条項(「買戻し特約」とも)があると、それはファクタリング=「債権の売買」ではなく「債権を担保にした貸付」とみなされる可能性があります。貸付を行うには貸金業の登録が必要になります。

しかし悪質な業者の中には、償還請求権ありなのに貸金業登録を行っていない場合があり、文字通り違法なのです。

正規のファクタリング業者はノンリコース契約を取り扱うところが大部分で、当然ながら貸金業の登録があります。
公式HPには貸金業登録があることを記載していますし、業者名から検索することも可能です。(※3)

※3 金融庁/登録貸金業者情報検索サービス

2.「法外」な手数料

冒頭で「ファクタリングは融資(借金)ではない」と説明しました。
しかし、いくらファクタリングが融資ではないとは言っても、その実態で注意すべきなのが手数料です。

悪質な業者で貸金業に該当する場合では、利息制限法及び出資法の上限金利を守る必要があります。
しかし悪質業者だからというべきか、手数料の料率についても法律上の制限など守れらていない文字通り「法外」な手数料を請求する悪質な業者がいますので、やはり注意が必要です。

「悪質業者」を見抜く3つのチェックポイント

ここまでは法的な視点で説明してきましたが、続いて銀行員として「このファクタリング業者は怪しい」と判断できるチェックポイントをまとめました。

① 契約書がない、または控えを渡さない

「あとから郵送します」などと言っておいて、契約書の控えを渡さない業者は悪質業者と考えるべきでしょう。
ファクタリングにかかわらず契約をした場合には、必ず契約者の控えをわたすものですし、事業資金事業資金融資でも、即時に手渡すべき控は必ず手渡ししているからです。

また当然ながら契約書自体がない(口約束、信用で契約など)などは論外で、言うまでもなく悪質な業者なので絶対に取引してはいけません

② 手数料が相場より著しく高い、または不明瞭

ファクタリングの手数料相場は、実質年率で1%台から20%台です。(筆者調べ) こうした相場を大幅に超える手数料を提示された場合や、別払いで「手付金」「審査料」「着手金」など、よく分からない名目でお金を要求された場合は、悪質業者の可能性が高いと言えます。

③ 会社の所在地や固定電話が怪しい

ホームページに携帯電話の番号しか載っていないなど、連絡電話番号が怪しいのは闇金や街金などと同じで悪質な業者と考えるべきです。会社所在地もよく調べたら賃貸の部屋だった(住所が記載してあれば地図ソフトでも検索できます)など、悪質な業者は連絡先や所在地からして怪しいので注意すべきポイントなのです。

悪質業者に関わってしまったらどうする?

資金繰りに追われ、怪しい業者と契約してしまったなど、悪質な業者と取引してしまった場合には、被害を抑えるために以下の対処法があります。

1.警察や弁護士に相談する

明らかに違法である場合には、警察や弁護士などに相談をしましょう。
警察なら「生活安全課」など、あるいはヤミ金問題などに強い弁護士に相談することをおすすめします。

2.取引をストップする勇気を持つ

違法な業者との取引は、それ自体が違法な契約ですから、原則として取引自体が成立していないと考えるべきで、相手の言うがままに(悪質業者では恫喝や脅迫なども危惧されます)支払うべきではありません。警察や弁護士などに相談をしたうえで支払いをストップすることが、会社やあなた自身とご家族を守る道です。

3.慌てないで、でも悩みすぎないで

もっとも大事なのは、悪質業者に関わってしまったからと慌てないことです。こちらが弱みを見せると、そこを悪質業者につけ込まれる恐れがあるからです。 かといって、一人で抱え込んで悩みすぎないことも大事です。警察や弁護士などに相談せず悩んでいても事態は好転しませんし、悪化するばかりですから。

まとめ〜正しい知識でファクタリングを有効活用

今回は現役銀行員として、悪質なファクタリング業者の手口とその見抜き方について解説しました。

ポイントは以下のとおりです。

  1. ファクタリングは正当な資金調達手段だが、悪質業者もいるので注意が必要。
  2. 「償還請求権あり」や「法外な手数料」は、悪質業者の可能性が高い。
  3. 契約書がない、所在地が怪しいなど悪質業者の特徴を見逃さない。

資金繰りに詰まると、冷静な判断力を失いがちです。悪質な業者は、そうした焦りを見透かしてきます。

正しい知識を身につけてファクタリングという強力な武器を正しく使いこなすことは、事業を成長させるための有効な戦略です。この記事がその参考になれば幸いです。