「資金繰りが急に厳しくなったが、ファクタリングを使うと銀行の心証が悪くなって、次の融資が受けられなくなるのではないか?」
「一度でもファクタリングを利用したら、ブラックリストのような扱いになるのではないか?」
私は銀行員として、経営者からこんな言葉をよく耳にすることがあります。またネットなどでは「ファクタリング利用=銀行融資NG」といった極端な意見も見かけます。
しかし結論から言うとファクタリングを利用したという事実だけで、即座に銀行融資が謝絶されるようなことはありません。
ただし銀行がその事実をどう捉えるか、そしてファクタリング利用をどのように説明するかによって、結果は天と地ほど変わります。
そこでこの記事では、銀行や融資担当者が「ファクタリング利用」をどのように見ているのか、そのリアルな内情を解説します。
銀行との良好な関係を維持しながら、賢くファクタリングを活用するための「真実」をお伝えしますので、ファクタリングを検討している人はぜひ参考にしてください。
なぜ「ファクタリング利用=審査に不利」と言われるのか?
なぜ「ファクタリングを使うと銀行融資に落ちる」と言われるのでしょうか?
そこでまず、銀行員がファクタリング利用に気づくとどのような心理状態になり、何を懸念するのかについて解説します。
銀行員は「資金繰りの逼迫」を警戒する
「ファクタリングは将来入ってくるはずの売掛金を早期に現金化する手法」です。
いっぽう、銀行は「返済能力」を重視しています。この2点を銀行員的な視点で厳しく解釈すると、「期日通りの入金を待てないほど、手元の資金(キャッシュ)が枯渇しているのではないか?」という疑念に繋がることがあります。
銀行融資の金利(年率数%)に比べ、ファクタリングの手数料は実質的なコストとして高くなる傾向があります。
そのため銀行員のイメージでは「高い手数料を払ってでも現金を確保しなければならない=自転車操業状態ではないか?」このように短絡的に結びつけられてしまうことが、噂の最大の原因です。
昔の「高利借入」と同じようなアレルギー反応〜現在は違う
私が入社した、今から20年以上前の銀行業界ではノンバンクのビジネスローンなどを利用している企業に対して、条件反射的にネガティブな評価を下す風潮がありました。
当時は今のようにノンバンクではなく一様に「高利借入・高利貸し・サラ金」と表現されて銀行員には毛嫌いされていたのです。
この延長でファクタリングにもネガティブなイメージがついて回り、現在も根強く残っているのです。
もちろん言うまでもなくビジネスローンもファクタリングも、現在では社会的にも認知されている資金調達方法です。
そして20年前と比べれば、銀行員のイメージもかなり向上してはいるのですが、拒絶反応は根強く残っていることも否定できません。
しかし現在は時代が変わりました。ファクタリングは正当な経済活動です。
そのため単に利用した事実だけでアウトと判定するような短絡的な審査は、まともな銀行であれば行いません。
重要なのは「なぜ利用したのか」という背景なのです。
現役銀行員はここでファクタリング利用に気づく
では、実際に私たちが融資の相談を受け付けたときや日々のモニタリングなどで、取引先企業のファクタリング利用をどのようにチェックしているのでしょうか?
この章では銀行員が具体的にチェックしているポイントと、それがどう影響するかを解説します。
1.預金口座の入出金明細
これが最もバレやすい、私たちが最も注目するポイントです。
融資審査の際、必ず直近の試算表と共に「預金通帳のコピー」や「当座勘定照合表」を頂きます。(すでに融資取引がある企業の場合は、銀行内部で通帳の動きを随時チェックします。)(※注1)
具体的にどのような方法でチェックして、またどのような兆候を掴むのか?などは部外秘でお話できません。
しかし銀行では口座の動きからファクタリングを利用していることは確実にわかる、と言えます。
銀行と融資取引をすると、預金口座の入出金などはその都度顧客の承諾なし無しでも銀行が見ることができます。口座の動きなどは個人情報であり、自行の預金口座だとしても勝手に銀行がアクセスして見ることはできません。しかし銀行と融資取引する場合は別で、銀行が必要と判断すれば見ることができるように基本契約書類(「銀行取引約定書」など)で同意を得ています。
2.決算書の「売掛金」と「月商」のバランス
決算書や試算表で、売掛金が売上高に対し極端に少ない場合もチェックの対象となります。
一般的な認識では、月商1,000万円・売掛金回収サイトが1ヶ月なら、売掛金は常に1,000万円前後あるはずです。
しかしこれが常に200万円しかない場合には「債権を譲渡して現金化しているのではないか?」と推測します。
ちなみに銀行では取引先企業の情報(提出を受ける決算書、試算表や口座の動き)をビッグデータとして常に収集・分析しています。
そして銀行が収集した情報から取引先企業の異常値があれば「アラーム」が担当者に伝わる仕組みになっています。(私の勤務する銀行の場合)
銀行融資の審査にマイナス作用するファクタリングの使い方
冒頭で「ファクタリング利用=即融資NGではない」とお伝えしました。
しかし使い方を間違えたならば、当然ながら銀行の評価は落ちます。
そこで私が銀行員の仕事の中で実際に見てきた「これは融資できないな」と判断せざるを得なかったケースをご紹介します。
銀行員が危険な兆候と感じるNG行為について解説しますので、反面教師として参考にしてください。
1.虚偽・隠蔽
銀行にとって最も心証が悪いのは「嘘(虚偽)」と「隠すこと(隠蔽)」です。
たとえば銀行融資の審査中とか、あるいはリスケジュール(融資返済が苦しくなり、元金返済の猶予をすること)の交渉中に、銀行に黙ってファクタリングを利用して、それが後から発覚した場合です。
もちろんファクタリングの利用は企業の自由意志で、いちいち銀行の許可を得る必要はありません。
しかし「売掛金が膨らんで手元資金がない」と言って融資を申し込んだ企業がファクタリングをしたなら、そもそも融資申し込みの理由が嘘になってしまいます。
また上記したようなケースなどで自分に不都合になるからファクタリング利用を隠した(*具体的な方法はお話することができません)と発覚すれば、銀行からの信用は失墜してしまいます。
融資の申込みでもリスケジュール相談でも、隠すことなくファクタリング利用をオープンにすることが重要で、それが双方の信頼関係につながります。
もちろんファクタリング利用が審査にどう影響するかはわかりませんが、嘘や隠蔽をしてバレるよりマシです。
2.慢性的な利用と利益の圧迫
ファクタリングは本来、短期的な資金ショートを補うための「つなぎ」であるべきです。
しかし、毎月のようにファクタリングを利用して手数料を払い続けるのは避けるべきです。
こうした状態を銀行員は「本業の利益が、ファクタリング手数料で食いつぶされている。これでは借入金を返済するお金が残らない」と感じるかも知れません。
ネガティブに見られると事業の継続性に疑問符がつき、最悪の場合追加融資は難しくなります。
3.悪質な業者(ヤミ金まがい)の利用
残念ながらファクタリング業界には、一部の法外な手数料を取る悪質な業者や、実態がヤミ金に近い業者が紛れ込んでいます。
絶対に利用は避けるべきですが、知らずに取引してしまった場合などは即座に警察や弁護士へ相談するとともに、融資取引がある銀行にも伝えておくべきです。
自発的に伝えれば銀行も顧客を責めるようなことはありません。
とはいえ「資金繰りに行き詰まっているからヤバい業者に引っかかったのでは?」とネガティブに捉えられるかもしれません。
しかしながら、ここまで説明したように「隠している」ことのほうが事態は悪くなるばかりです。
どうせいずれは銀行に気づかれてしまうのですから、むしろ早めに報告したほうが失うものも少なく済むかも知れません。
銀行員が高評価で納得する「賢いファクタリング活用法」
ここまで厳しい話もしましたが、逆に「この使い方は合理的だ」「経営手腕がある」と銀行員が評価するケースも存在します。
ファクタリングは武器です。
使い手が賢ければ、銀行融資以上の効果を発揮し、結果として銀行からの評価を高めることも可能なのです。
1.「オフバランス化」による財務体質の改善
これがファクタリング最大のメリットであり、銀行員への説明材料として最も有効なロジックです。(つまり「ものは言いよう」であって、借入金(負債)を増やさずに、売掛金(資産)を現金化することで、総資産を圧縮したと説明すればいいのです。
「今期は借入を増やさずにスリムな経営を目指すため、あえてファクタリングを活用してバランスシートを軽くしました」 このようなトークで、単に金がないからではなく財務戦略としてファクタリングを利用したとアピールしてください。
2.急激な売上増に伴う「前向きな資金需要」
大きな受注で仕入れ資金が必要になっても、銀行融資は審査に2週間〜1ヶ月かかることがザラなのでビジネスチャンスを逃してしまいます。
そこで「大口の仕事が入ったが、銀行融資を待っていると納期に間に合わない。だから、つなぎとしてファクタリングを利用した。この入金があれば利益は確実に出る」 このようなストーリーであれば、銀行員は納得します。
「後ろ向きな資金繰り」ではなく「売上を作るための投資」だからです。
まとめ~ファクタリングは「隠れてやるもの」ではなく「戦略的に使うもの」
今回は現役銀行員の立場から、ファクタリングと銀行融資の関係などについてを解説してきました。
今回の記事のポイントをまとめると以下のようになります。
- ファクタリング利用=銀行融資NGではない
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正当な経済活動であり、利用しただけで融資を拒絶されることはありません
- 銀行員が嫌うのは「不誠実」と「悪循環」
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ファクタリングを隠すとか、手数料で利益を食いつぶすような利用はNGです
- 「理由」と「相手」が正しければ問題ない
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「急な受注増」「オフバランス化」など、前向きな理由を説明できるようにしましょう。
そして何より、銀行員が見ても安心できる「優良なファクタリング業者」を選ぶことが必須です。
私たち銀行員は、企業の成長を阻害したいわけではありません。
資金ショートして倒産してしまうくらいなら、ファクタリングを活用してでも事業を継続し、生き残ってほしいと願っています。
その点ファクタリングは、銀行融資にはない「スピード」と「柔軟性」という強力な武器を持っています。
銀行融資とファクタリング、それぞれの特性を理解し、使い分けることができる経営者こそが、激動の時代を生き抜くことができます。

