ファクタリングは「困ったときの最終手段」というだけではなく「攻めの資金調達」にもなり得ます。大切なのは手数料を含めた資金計画を立てたうえで利用することです。まずは複数の業者から見積もりを取り、条件を比較してみてください。正しい知識があれば、ファクタリングはあなたの事業を支える頼もしい味方になるでしょう
「来月の入金まで資金が持たない」
個人事業主なら、一度はこうした不安を感じたことがあるのではないでしょうか?
銀行融資は審査に時間がかかり、急な資金需要には間に合わないケースも少なくありません。
そこで注目されているのが、売掛金を早期に現金化できる「ファクタリング」という資金調達手段です。
一方で、「そもそも合法なのか」「個人事業主でも利用できるのか」「悪質な業者に引っかからないか」といった疑問や不安を持つ方も多いでしょう。
この記事では、ファクタリングの基本的な仕組みから法的根拠、個人事業主が利用する際の注意点や業者選びのポイントまで、わかりやすく解説します。
正しい知識を身につけ、安心して資金繰りの選択肢を広げましょう。
ファクタリングは、実は昔から存在する合法的な資金調達方法
ファクタリングは、売掛債権を第三者に譲渡して資金を得る仕組みであり、その法的根拠は民法に明記されています。
金融庁もファクタリングについて「事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービスであり、法的には債権の売買(債権譲渡)契約」と定義しています。
出典:金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」
具体的には、民法第466条が債権の譲渡を認め、民法第555条が売買契約の成立要件を定めており、これらがファクタリングの法的な裏付けとなっています。
さらに、2020年4月の民法改正では、従来ファクタリングの支障となっていた譲渡制限特約付き債権の譲渡が認められるようになりました。
出典:e-GOV法令検索「民法第四百六十六条」
出典:e-GOV法令検索「民法第五百五十五条」
経済産業省中小企業庁も、中小企業者が不動産担保に過度に依存せずに資金調達できるよう、売掛債権の利用促進を国の施策として推進しています。
出典:中小企業庁「売掛債権の利用促進について」
ファクタリングが違法と誤解される理由
「ファクタリング」と検索すると「違法」「やばい」という言葉が並びます。
これらを目にして利用を検討している方は不安を感じるかもしれません。
このような誤解が生まれる背景には、主に4つの原因があります。
債権買取がわかりにくいから
ファクタリングは売掛債権を売却して現金を得る取引です。
しかし「債権譲渡」という言葉自体が日常的ではありません。
金融庁はファクタリングを「売掛債権等を期日前に買い取るサービス」と説明しています。
出典:金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」
法的には債権の売買契約であり、借入れとは異なります。
ところが、手数料を差し引かれて入金される流れが融資と似ています。
そのため「高い利息を取られているのでは」と感じる方が少なくありません。
実際にファクタリングは貸金業ではなく、金利の上限規制も適用されません。
仕組みを正しく理解すれば、売掛金という資産の売却にすぎないとわかります。
馴染みのない用語や取引の見た目が、誤解を招く第一の原因です。
違法な高利貸しと見なされがちだから
ファクタリングの手数料は、銀行融資の金利と比べると高く見えます。
2社間ファクタリングでは8〜18%程度が一般的な相場です。
この数字だけを見ると「高利貸しでは?」と感じる方もいるでしょう。
しかしファクタリングはお金を借りる取引ではありません。
売掛金という「資産」を売って現金に換える取引です。
そのため、手数料は借入れの利息ではなく売買の対価にあたります。
また、ファクタリングは売掛債権の売買であり、貸金業の法規制の対象外です。
たとえば不用品を買取店に売るとき、定価より安くなるのと似た仕組みです。
ファクタリング会社が設定する手数料には売掛先が支払えなくなるリスクや回収の手間が含まれています。
「利息が高い」のではなく「買取価格に手数料がかかる」と考えるとわかりやすいでしょう。
違法行為である「給与ファクタリング」と混同されるから
「給与ファクタリング」とは個人の給与債権を買い取る形で金銭を渡す手口です。
金融庁はこれを貸金業に該当すると明確に判断しています。(つまり、給与ファクタリングは違法です!)
無登録業者がこの手口で暴利を得る事件が相次ぎました。
被害者は年率数百〜千数百%もの手数料を請求されたケースもあります。
恫喝や勤務先への連絡といった悪質な取立ても報告されています。
出典:金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」
この問題がメディアで大きく取り上げられた結果、「ファクタリング=違法な金貸し」という印象が広がりました。 …とはいえ、違法行為である「給与ファクタリング」と事業者向けの売掛債権買取である一般的なファクタリングとは全く別の取引です。
同じ「ファクタリング」という名称が使われたことで、両者がともに違法であるとみなされてしまったことが多くの方々に誤解を産んでしまった大きな理由です。
悪質業者のニュースで不安になるから
日本貸金業協会は、偽装ファクタリングについて注意喚起を行っています。
偽装ファクタリングとは債権買取を装い実態は違法な貸付けを行う手口です。
買主が回収リスクを負わず、回収できない場合に買戻しさせるのが特徴です。
出典:日本貸金業協会「悪質な金融業者にご注意!」
こうしたニュースが報じられるたびにファクタリング印象が悪化してきました。悪質業者が後を絶たない背景には、ファクタリング業に免許や登録が不要で参入障壁が低い[※1] ことがあります。
そのため悪質な業者も市場に紛れ込みやすい状況です。
一部の悪質業者の行為が業界全体の信用を損ねています。
正規業者と悪質業者を見分ける知識が不可欠といえるでしょう。
[※1]参考:https://betrading.jp/contents/factoring-basic/factoring-licence/
ファクタリングの利用を検討すべき場面
個人事業主の資金繰りは、常に綱渡りの連続です。
ファクタリングが力を発揮するのは、まさに「今すぐ現金が必要」な場面です。
ここでは、利用を検討すべき代表的な6つの場面を紹介します。
入金日よりも支払日が先に来てしまうとき
個人事業主にとって最も多い悩みが入金と支払いのズレです。
売掛金が入金されるまでには30日後や60日後といった待ち期間があります。
しかし外注費や仕入代金の支払いは待ってくれません。
帳簿上は黒字でも手元に現金がない状態が生まれます。
売上が上がっているのに、手元に支払うためのお金がないという状況は深刻です。
こうした資金難をフォローしてくれるのがファクタリングです。
ファクタリングを使えば入金待ちの請求書を売却でき、手数料を差し引いた金額を最短即日で受け取ることが可能です。 支払いサイトの長さに悩む方にとって有効な選択肢です。
取引先(金融機関や売掛先)に知られたくないとき
資金繰りに困っていることを取引先に知られたくない方は多いでしょう。
「経営が厳しいのでは」と思われると取引に影響しかねないからです。
2者間ファクタリングなら売掛先への通知なしで請求書を売却でき、相手に知られずに資金調達が可能です。
今後の取引関係に影響を与えにくい点が大きなメリットといえます。
また銀行融資と異なり利用情報は信用情報機関に登録されません。
ファクタリングを利用しても金融機関との今後の取引に響かない点も安心材料です。
創業期で会社の信用が低いとき
開業して間もない時期は、銀行融資の審査を通るのが難しいものです。
実績や決算書がまだ十分にそろっていないことが主な理由です。
一方でファクタリングの審査では、自社の信用力はあまり問われません。
重視されるのは、売掛先にきちんと支払い能力があるかどうかです。
そのため創業直後で融資が受けられない方でも利用しやすいといえます。
信用力のある企業との請求書があれば、審査に通る可能性は十分あります。
事業が軌道に乗るまでの資金繰りを支える心強い手段になるでしょう。
財務状況が悪く融資を受けにくいとき
赤字決算や税金の滞納があると、銀行融資の審査は非常に厳しくなります。
しかしファクタリングは融資と審査の基準が大きく異なります。
審査で最も重視されるのは、自社の財務状況ではなく売掛先の支払い能力です。
そのため赤字や債務超過の状態でも、審査に通る可能性が十分あります。
税金を滞納している場合でも、分納など何らかの手続きを進めていれば利用できることがあります。
ただし滞納が長期化して差し押さえのリスクが高い場合は断られることもあります。
あくまで一時的な資金繰りの改善策として、上手に活用したい手段です。
新規案件を受注でまとまった資金が急に必要となったとき
大きな案件を受注すると、外注費や材料費を先に支払う場面が出てきます。
しかし銀行融資は審査に数週間かかることも珍しくありません。
ファクタリングなら既存の売掛金を最短即日で現金化できる場合があります。
さらに注文書や受注書の段階で買取に対応する業者も存在します。
手元にある請求書を活用すればスピーディーな資金確保が見込めるでしょう。
ただし即日入金には早めの申し込みと書類の事前準備が欠かせません。
ビジネスチャンスを資金不足で逃さないための「攻めの資金調達」として活用できます。
担保や保証人の用意が困難なとき
銀行融資では不動産などの担保や保証人を求められることがあります。
個人事業主にはこれらの用意が難しいケースが多いでしょう。
ファクタリングは売掛金の売買取引であるため、原則として担保や保証人は必要ありません。
一般的に求められるのは請求書と通帳のコピー、本人確認書類などです。
ただし業者によって必要書類は異なるため、事前に確認しておきましょう。
経済産業省中小企業庁も不動産担保に依存しない資金調達を推進しています。
担保を持たない個人事業主でも売掛金があれば利用可能です。
身軽に資金調達できる点が大きな魅力といえるでしょう。
まとめ
ファクタリングは民法に基づく債権譲渡であり、合法的な資金調達手段です。
経済産業省も売掛債権の活用を推進しており、個人事業主にとって心強い選択肢といえます。
一方で偽装ファクタリングや給与ファクタリングといった違法な手口も存在します。
正規の取引と悪質業者をしっかり区別することが大切です。
手数料の相場や契約内容を事前に確認し、信頼できる業者を選ぶことで安全に活用できるでしょう。

