ファクタリングは「売掛金さえあれば審査なしで通る」と誤解されがちですが、実際には厳格な審査が存在します。そこで銀行員の私が融資のプロの視点で、ファクタリング審査で重視される2つのポイントを解説します。
昨今、中小企業の新たな資金調達手段として「ファクタリング」が注目を集めています。
銀行借入とは異なり「借金ではない」という特徴がある一方で、一部では「審査無しでファクタリング!!」といった甘い言葉で勧誘する業者もあります。
しかしファクタリングに無審査はありません。
銀行融資とは異なる視点でチェックされているのです。
ポイント1.利用者自身の信用よりも重視される「売掛先の信用」
ファクタリング審査における最大の特徴は「利用者(あなた)」よりも「売掛先(取引先)」の信用力が重視される点にあります。
銀行融資が返済能力、つまり「あなたの会社が返済できるか」を見るのに対し、ファクタリングでは「(あなたではなく)売掛先が期日に支払いを行えるか」を評価します。
この章では、なぜ売掛先の信用が最優先されるのか、そして審査担当者が具体的にどのような手法で売掛先の倒産リスクや支払い能力を調査しているのか、その舞台裏を詳しくお伝えします。
売掛先の信用力が審査の成否を分ける理由
ファクタリングの性質は融資ではなく「売掛金の現金化(売掛債権の売買)」です。売掛金を買い取る側(ファクタリング会社)にとって最大の最大のリスクは、買い取った債権が回収不能になること、つまり「売掛先の倒産」です。
そのためファクタリング会社は、売掛先が本当に1ヶ月後、2ヶ月後にお金を払ってくれるか?という点に、審査のエネルギーの多くを注ぐのです。
売掛先が倒産しないかどうかの調査方法
ファクタリングの審査では、単に「有名な会社だから大丈夫」といった主観ではなく、多角的なデータを用いて客観的に評価を行います。基本的にファクタリング審査の内容は部外秘の極秘事項(*審査の内容や基準を知られると悪用される恐れがあるので部外秘になっています)です。しかし企業の資金調達という点で共通する銀行融資の観点でいくつかの審査手法は以下の通りだと銀行員の私は考えます。
<売掛金が倒産しないか?の調査方法>
- 専門機関による企業情報の活用
「帝国データバンク」や「東京商工リサーチ」【参考①】といった信用調査機関の情報や評点をチェックします。これらは銀行の融資審査でも資料として利用されています。
- 不渡りなどの「不芳情報」の確認
過去に不渡りを出したとか、訴訟を抱えていないかといった企業にとっての良くない情報(これを「不芳情報」などと呼ぶことがあります)を各種データベース等で確認します。
【参考①】
ポイント2.「成因資料」の整合
「成因(せいいん)資料」という言葉は、一般の方には馴染みが薄いかもしれませんが、我々銀行員が融資の際に最も神経を使う書類の一つです。ファクタリングの場合なら「売掛債権がどのような経緯で発生したのか」を証明するのが成因資料となります。
ファクタリングにおけるトラブルの典型的なものは、架空の売掛債権捏造や二重譲渡です。
これらを防ぐため、審査では「書類のつじつま」が完璧に合っているかどうかが厳しく精査されます。
そこでこの章では、審査でどのような部分に不自然さを感じるのか?を具体的に解説します。
提出書類(請求書、契約書など)の「辻褄・つじつま」
ファクタリング審査の内容は極秘扱いと説明した通りで、成因資料の確認方法や真贋を見抜く着眼点もありますが、もちろん部外秘です。とはいえこれも前述と同様で、銀行融資の視点で考えてみましょう。
審査を通過するためには、以下のような整合性が求められます。
<審査書類の辻褄・つじつま>
ここではあくまで一例をしましたが、こうした矛盾はプロの目から見れば一発でおかしいと見抜かれてしまいます。
偽造書類を見抜く着眼点
こちらはもっと深刻ですが、残念ながら請求書を偽造してファクタリングを申し込むケースも後を絶ちません。こちらも銀行融資審査の視点で具体例を紹介します。
<偽造書類を見抜く着眼点>
- 印影の「不自然」さ
最近では電子印鑑も増えていますが、依然として印鑑は取引で用いられます。しかし以前提出された書類と同じ位置に印影がある(精巧なカラーコピーの疑い)などは注意深く見られます。
- フォントや書式の「ゆらぎ」
契約書や請求書において、複数のフォント(文字のデザイン「明朝」など)が混ざっているのは不自然です。また数字の表記(万円単位のあとに千円単位、円単位などが入り交じっている)とか桁区切り(カンマ)が間違っていると偽造が疑われます。
悪質業者による「書類不備」への誘導に注意
ここで一つ、利用者の皆さんに強く注意喚起しておきたいことがあります。
一部の悪質な業者は、あえて「書類が足りなくても大丈夫ですよ」「こちらで少し修正しておきますね」と、甘い言葉をかけてくることがありますが、これは非常に危険です。
そもそも審査に必要な書類を求めておきながら、「無くても大丈夫」と後出しで言ってくるのは、要するに早く取引を完結させたい意図が見えます。このような場合、ファクタリングを謳っておきながら実際には融資だったといった、闇金まがいの悪質業者の恐れもあります。
正規の優良なファクタリング会社であれば、必ず整合性の取れた正確な書類を求めます。しかしこれは審査が厳しいのではなく、その業者が法律を遵守し、健全な運営を行っている証拠でもあるのです。
5.まとめ
ファクタリングは、正しく使えば「経営のスピードを上げる強力な武器」になります。しかし、そのためには「審査」というハードルを越えなければならず、そこでは銀行融資とは違った「エビデンス(証拠)」の整合性が求められます。
今回の内容をまとめます。
- 売掛先の信用が第一
ファクタリングは売掛金=取引先の信用度を買い取る仕組みなので、自身の信用が低くても優良な売掛金があればチャンスはある。
- 成因資料の整合性を徹底する
契約書、請求書の日付や金額のズレなど書類の不備は「疑い」を生み、審査落ちの原因となる。
私たち銀行員から見て、ファクタリングは決して「怪しいもの」ではありません。
正規の登録を受け、適切な手数料で運営している優良なファクタリング会社を選び、計画的に利用するのであれば、それは立派な経営戦略です。
ただし、ファクタリングを使わずに済む「キャッシュに余裕のある経営」こそが、本来のゴールであることを忘れないでください。ファクタリングで得た時間を使い、コスト削減や売上向上に励み、将来的に銀行から好条件で融資を受けられる体質を作っていく。そのための「一時的なステップ」として、本記事の内容を役立てていただければ幸いです。
資金調達の道は一つではありません。
プロの視点を理解し、誠実な情報開示を行うことで、道は必ず開けます。

