銀行員が教える「資金繰り表」の作り方とファクタリングの組み込み方

監修者:加藤隆二
この記事の監修者
加藤隆二 現役ベテラン銀行員ライター

資金繰りの悩みは、正体が見えないと恐怖に変わります。しかし資金繰り表で未来を可視化し、ファクタリングを場当たり的な借金ではなく「戦略的な決済手段」として使いこなせば問題は解決します。

と、ここまで「資金繰り」などの言葉に拒否反応を覚えた方は、要注意!です。なぜなら 経営者として資金繰りを避けて通ることはできないからです。 そこでこの記事では資金繰り表について、いつも銀行員としてお客様に語りかけているように、長年培った経験からわかりやすく解説していますので、どうか最後まで読んでみてください。

銀行員の私は30年以上にわたり、数え切れないほど企業の決算書を読み、融資の現場で経営者の方々と向き合ってきました。その中で痛感するのは「倒産する企業の多くは、赤字だから潰れるのではない。現金がなくなるから潰れるのだ」という冷徹な事実です。

いわゆる「ドンブリ勘定」は、黒字倒産を招く最大の要因となります。

そこで本記事では、現役銀行員の視点から経営の命綱である「資金繰り表」の具体的な作成方法と、ファクタリングを健全な資金調達手段として計画的に組み込む技術をわかりやすく解説します。

【資金繰り表の作り方】3ヶ月先までの入出金を可視化する

資金繰りにおいて最も重要なのは「未来の現金の動き」を予測することです。過去の数字を記録する「試算表」や「決算書」だけでは、来月の支払いに耐えられるかどうかは判断できません。まずは、最低でも

3ヶ月先までの現金の動きを可視化する習慣をつけましょう。

この章では、なぜ3ヶ月という期間なのか、そして具体的にどのような項目を整理すべきなのか、銀行員が審査時にチェックする視点も交えて解説します。

いつ、いくら足りなくなるかを正確に把握する

資金繰り表を作成する最大の目的は、現金が底をつくときを事前に特定することです。

銀行員として本音を言わせてもらえば、資金がショートする1週間前に相談に来られても、融資の実行は物理的に不可能です。しかし、3ヶ月前に「このままだと3ヶ月後の末に1,000万円足りなくなる」と把握できていれば、打てる手はいくらでもあります。

銀行員として長年の経験から私は、資金繰りはダムの水のようなものだと感じています。渇水でダムの水が枯れそうだから、前もって計画的に節水を呼びかけるなどの予防をすれば深刻な事態にはなりません。

しかしなんの対策もしなければ水はどんどん減っていきます。そして、昔ダムに沈んだ町や道路が見えるようになったらもう手遅れです。

資金繰りでもお金の底が見えてから動いても、もう手遅れで打つ手はありませんので。

いつ、いくら足りなくなるかを把握する

資金繰り表作成のコツは、入金を「固いもの」と「不確定なもの」に分けることです。

確定している売掛金の回収日を基準にして、支出については家賃・給与・税金など、動かせない固定費から先に埋めていきます。

このように「いつ、いくら足りなくなるかを把握する」作業を行うだけで、経営者の「なんとなく不安」という霧が晴れ、具体的な数字に基づいた対策を検討できるようになります。

銀行員が信頼する資金繰り表の精度とは

私たち銀行員が融資審査をする際には、経営者が持参する資金繰り表の「精度」を重視します。

精度が高いというのは、予測と実績の乖離が少ないことを指します。

例えば毎月の売上予測が楽観的で実際の入金が見込みを下回っている場合には、その資金繰り表は文字通り「楽観的な願望の資金繰り」に過ぎないと判断されます。

逆に、売上回収が遅延するリスクや季節的な変動を織り込んだ保守的な表を作成している経営者は、リスク管理能力が高いと評価されます。

精度の高い資金繰り表は管理ツールであるだけでなく、銀行からの信頼を勝ち取るための「最強のプレゼン資料」になり得るのです。

デジタルとアナログの使い分け

現代ではクラウド会計ソフトなどが普及しており、自動で資金繰り予測を出してくれる機能もあります。いっぽう、手書きや表計算ソフトなどで自作した試算表を使っている経営者の方もいます。

銀行員として申し上げると、コンピュータが作ったものでも、あるいは自作のものでも優劣はないと感じています。なにより大事なのは経営者の予測やリスク対策などが反映され「血が通っている資金繰り」になっているか?という点です。

自動作成で美麗でも中身がない資金繰り表より、手書きで見栄えが悪くても経営者が作ったことが感じられる資金繰り表のほうが銀行の評価は高いのです。

余談

…とは言いましても、資料としては見やすいほうが歓迎されますので、できれば経営者自らソフトなどで作った方がが無難ではあります

【ファクタリングの組み込み方】不足分をどこで埋めるか。

資金繰り表で資金不足が予測されたなら、次はその穴をどう埋めるかを検討するフェーズに入ります。

主な手段は「銀行融資」と「ファクタリング」ですが、これらは対立するものではなく、特性を理解して使い分けるべきものです。

ここからは現役銀行員だからこそ言える、融資とファクタリングの使い分けの基準、そしてそれぞれのメリット・デメリットを比較・分析していきます。

融資か?ファクタリングか?〜コスト比較と入金スピードで手段を割り振る

銀行融資のメリットは低金利でコストが低いところです。年利1%〜数%程度で調達できる融資は、長期的な設備投資や運転資金に最適です。

一方銀行融資のデメリットは審査に時間がかかることと、必ずしも希望額が通るとは限らないことです。

これに対し、ファクタリングのメリットは「圧倒的なスピードの速さ」です。最短即日で売掛金を現金化できる機動力は、銀行融資には到底不可能です。

しかし、デメリットとして銀行油脂よりはコスト(手数料)が割高な点が挙げられます。

銀行員としてのアドバイスは、「時間を買うならファクタリング、利益を守るなら銀行融資」という使い分けです。例えば、2ヶ月後に資金不足が予測されるなら、まずは低コストな銀行融資を申し込むべきです。しかし「明日までに仕入れ代金を払わないと大きな商機を逃す」「銀行審査を待っていたら不渡りを出してしまう」という緊急事態においては、手数料を払ってでもファクタリングで現金を確保するのが正解です。銀行融資と比較して割高なファクタリングのコストでも、それは損失ではなく会社を存続させるための必要経費と考えるべきでしょう。

ファクタリングを「融資の代わり」にしない

一般に意外とよくある誤解ですが、ファクタリングは「借入(融資)」ではありません。

ファクタリングとは売掛債権の売買、つまり資産を早期に現金化する資金調達の手段です。そのため融資とファクタリングを混同して、恒常的な赤字補填にファクタリングを使い続けるのは非常に危険です。

ファクタリングを頻繁に利用している企業の決算書を見ると、「資金繰りが相当苦しいのだな」と銀行員の私なら警戒するでしょう。しかし、それが「一時的な大型案件の仕入れのため」とか「季節要因による一時的なキャッシュフローのズレを埋めるため」といった明確な理由に基づいた、計画的な利用であれば話は別です。

ファクタリングは、いわば「栄養ドリンク・強壮剤」

ここぞという場面で使うからこそ効果を発揮するのであって、常用してしまえば高い手数料が経営を圧迫し、本来の「健康な経営(銀行融資が受けられる状態)」から遠ざかってしまいます。

ファクタリングを資金繰り計画に組み込む実践術

資金繰り表にファクタリングを組み込む際、単に「入金が増える」と考えるだけでは不十分です。大事なのは手数料というコストを差し引いた実質的な入金を反映させ、その後のキャッシュフローへの影響をシミュレーションする必要があります。

この章では資金繰り改善策としてファクタリングをどう使いこなすか?その具体的な手法を提案します。

資金繰り表における「コスト(手数料)」の計上

ファクタリングを利用する場合、手数料というコストをはっきり見えるようにするべきです。

例えば100万円の売掛金を10%の手数料でファクタリングした場合、入金されるのは90万円です。

銀行員が資金繰り表を見るときは、この手数料から「この会社は利益率が高いから、20%の手数料を払ってもまだ利益が残るな」とか「今の粗利率で20%の手数料は、逆ざやになって経営を壊すな」などと分析します。

ファクタリング利用後の利益がどうなるかは、必ずご自身の目で確認してください。利益を削ってでも現金を確保すべき局面なのか、経営者としての判断基準を持つことが重要ですし、資金繰り表はその判断材料となるのです。

ファクタリング利用後の「リバウンド」に備える

言い方はあまり良くありませんが、ファクタリングは未来の入金を「前借り」するとも言えます。つまり、ファクタリングを利用した月は資金が潤沢になりますが、本来入金されるはずだった翌月や翌々月の入金はその分減少することになります。そのためファクタリング利用による現金不足を考えずず、追加でファクタリングをすると、その翌月もまたファクタリングをしなければならないといった自転車操業状態に陥る恐れがあります。

しかし資金繰り表を作成していれば「ファクタリング利用後のリバウンドがいつ来るか?」も予測する事ができます。

ファクタリングを利用する際は「この一回で資金ショートを脱却し、その後は通常のキャッシュフローに戻れるか」ということをしっかりシミュレーションしてください。もし戻れないのであれば、ファクタリングは根本解決になりません。その場合には固定費削減や資産の売却、あるいは銀行へのリスケジュール(返済猶予)交渉など、より抜本的な対策が必用になるかも知れません。

まとめ

ここまで、現役銀行員の視点から資金繰り表の重要性と、ファクタリングの計画的な活用方法について解説してきました。

最後に要点をまとるとこのようになります。

  1. 資金繰り表は「3ヶ月先」を予測して作成する

過去の記録ではなく、未来の現金の動きを可視化することが、黒字倒産を防ぐ唯一の方法です。

  1. 融資とファクタリングを賢く使い分ける

低コストな融資を基本としつつ、緊急時や商機を逃せない場面では、スピードに優れたファクタリングを「時間を買う」手段として利用しましょう。

  1. 計画的な利用で「自立した経営」を目指す

ファクタリングはあくまで一時的な調整弁です。資金繰り表にそのコストと影響を正確に反映させ、最終的にはファクタリングに頼らずとも、銀行融資や自己資金で回せる「健全な経営状態」を目指しましょう。

資金繰り表があれば、焦って悪徳業者に捕まることもありません。数字に基づいた経営は、あなたから「根拠のない不安」を取り除き、「確信を持った決断」を与えてくれるでしょう。

ファクタリングは、正しく使えば強力な武器になります。しかし、その武器を使いこなすのは、他ならぬ経営者であるあなた自身が握る「資金繰り表」という名の羅針盤なのです。

我々銀行員も、数字に強い経営者、リスクを予測し対策を講じている経営者を高く評価します。この記事が、御社の経営の健全化と、さらなる発展の一助となることを切に願っています。